「やあ、怪物くーん♪」
その日の上天気な空の下、２つのカップルが出会いました。
許婚同士の怪物くんと怪子ちゃん、相思相愛のヒロシくんとアコちゃん。
この２組は将来、良き夫婦として仲良くやって行きそうな雰囲気ですが、そんな和やかな雰囲気をぶち壊す事態が起きてしまいました･･･(汗)。
「ヒロシくん、いつも親切にしてくれて、ありがとう」
CHU！！
何と！！怪子ちゃんがヒロシくんに唐突にキッス！！
これにはヒロシくんもビックリだが、アコちゃんはもっとビックリ！！
(当然、怪子ちゃんの行動には特別な意味はございません：苦笑)
それを見ていた通りすがりの３人組･･･。
「ふふふ･･･何だか、壮絶な美少女対決になりそうね」
「あんれ、まあ･･･まるでオラ達みたいだべ」←(笑)
(この３人誰かに似てますが、ここは他人の空似と思って見逃してやって下さい：笑)
怪子ちゃんのいきなりのキスに、ヒロシくん前後不覚なぐらいにメロメロになった。
「ヒロシくん、しっかりして！」
すっかり色ボケになっているヒロシくんを支えながら、アコちゃんは怪子ちゃんに抗議した。
「ちょっと、あなた！馴れ馴れしくしないでよ！ヒロシくんは私の友達なんですからね！」
「あら、あなたにとって友達なら私にとってもヒロシくんは友達よ」
目の前のヒロシくんの有様にも、憤慨するアコちゃんの様子にも何処吹く風の怪子ちゃん。
この辺がお嬢様というか･･･(苦笑)。
『信じられない！何てデリカシーの無い人なの･･･！？こうなったら･･･！』
怒りのアコちゃん、ついに強行手段を取ってきた。
CHU！！
今度はアコちゃんが怪物くんに唐突のキッス！！
真っ赤になって立ち尽くす怪物くんを見て、怪子ちゃんはビックリ！！
「怪物くん、私の家に来ない？私の特製の手作りケーキをごちそうするわ」
「えっ！ホント！？」
ケーキと聞いて途端に目の色が変わる怪物くん、色ボケの表情で怪子ちゃんに振り返り言った。
「怪子ちゃん。悪いけどオレ、アコちゃん家でケーキご馳走になってくるわ。じゃ･･･」
「･･･って、ちょっと、怪物くん･･･！！」
「待ってよ、アコちゃん！！」
呼び止めるヒロシくんに思いっきりソッポを向いて、アコちゃんは怪物くんと肩を並べて去って行った。
「何なのよ、太郎ちゃんったら私以外の女の子にデレデレして･･･！！良いわ、ヒロシくん！私も手作りのクッキー焼いたの！ごちそうするわ！」
「ええっ！？い、良いよ！！」
「遠慮しないで！！」
怪子ちゃんの手料理と聞いて逃げ腰になるヒロシくんを、怪子ちゃんはお構い無しに怪物屋敷へと引っぱって行った。
この先、どうなる事やら･･･(汗)。
★ ★ ★ ★
「ヒロシくん。これが私の特製クッキーよ♪たくさん食べてね♪」
「う･･･うん･･･(苦笑＆冷汗)」
怪物屋敷の大広間のテーブルの上の皿に山と盛られたクッキーを前に、怪子ちゃんとヒロシくんが座っていた。
ヒロシくんは不安に震える手でその１つを取ると、恐る恐る口に入れた･･･ら！
「美味しい･･･美味しいよ！このクッキー！！」
「そりゃそうよ。オオカミ男のおじさんに、色々手解きしてもらったんですもの。すべては修行の賜物よ♪」
「こりゃ良いや。いっただきまーす♪♪♪」
食べ盛りと言うか、食い意地が張ってると言うか、ヒロシくんは皿の上のクッキーを次々に平らげていった･･･が！？
「う･･････！！怪子ちゃん、何なんだい！？この黒いトッピング！！」
「ああ、それ？アーモンド切らしたから、梅干使ったの」
「ぶえっっ！！！！」
「この小さい粒々は山椒の実で、この細いのはイカの塩辛･･･」
「もっ、もう良いよ！！ご馳走様！！」
ヒロシくんは慌てて立ち上がると、一目散に怪物屋敷を後にした。
「どうしたの？ヒロシくん、待ってよー！！」
その様子に驚いた怪子ちゃんは、慌ててヒロシくんの後を追った。
こちらはアコちゃんの家。
怪物くんはアコちゃんの手作りケーキ(こちらはちゃんとした材料：笑)をご馳走になりご機嫌になっていた。
「では、ご馳走の後に私の名曲をお聞かせ致しまーす♪」
「え･･･？(冷汗)」
嫌な予感に青ざめる怪物くんの前で、アコちゃんはバイオリンを弾き始めた。
ギィィィィィーーーーーーーッッ！！！！
あまりのひどい音に窓ガラスは震え、タンスや机の上の物は倒れ、額縁はズリ落ちた。
「どひゃーーーーっっ！！こりゃたまらん！！」
怪物くんもヒロシくん同様、慌ててその場を後にした。当然、アコちゃんもその後を追った。
「怪物くん、何で逃げるの？待ってー！！」
★ ★ ★ ★
怪物くんとヒロシくんは、逃げて逃げて逃げまくった。そうして逃げまくっているうちに、２人はバッタリ出くわした。
「わわっっ！！何だ、ヒロシか。どうしたんだ？」
「怪子ちゃんの手料理から逃げてきたんだよ。怪物くんこそ、何を慌ててるんだい？」
「オレはアコちゃんのバイオリンから逃げてきたんだ。だって、ひどい音なんだもん！！」
「お互い、女の子の色香に参るとロクな事が無いね･･･(苦笑)」
「まったくだな。はははは･･･！！」
なんて笑ってる場合じゃ無い。そうしているうちに怪子ちゃんとアコちゃんの声が近付いてきた。
「怪物くーん！！」
「ヒロシくーん！！」
「わわわっっ！！どうする！？怪物くん！！」
「仕方ない、こうなったら･･･念力！！風になれーーーーっっ！！」
すると、怪物くんとヒロシくんの姿はその場から消えてしまった･･･！！
「怪物くん･･･ボク達、空飛んでる･･･というかボク達、魂だけになってるよー！！」
「そうさ。オレ達は空気と一体化してるんだ。つまり風になった訳さ」
怪子ちゃんとアコちゃんには、怪物くん達の姿が見えないのはモチロン会話も聞こえないようで、しきりに当たりを探し回っていた。そうしているうちに２人はバッタリ顔を合わせた。
「あら、あなた。こんなところで何してるの？ヒロシくんはどうしたの？」
「私のクッキーが気に入らなかったみたいで逃げちゃったの。あなたこそ、こんなところで何してるの？」
「私の音楽聞いて逃げちゃったのよ」
「まあ、お気の毒に」
「そちらこそね」
２人はホホホと笑い合い、プイッとそっぽを向いた。怪物くんとヒロシくんはその様子を苦笑いで見ていたが･･･
「ねえ、怪物くん。ボク達は今、風になってるんだよね。となると、当然･･･イヒヒヒヒ♪」
「お前も同じ事を考えてたのか。そうだな、今のオレ達にはそれができるんだよな♪」
「それじゃ、一緒に･･･」
「そーれ！！」
怪物くん達は突風となって怪子ちゃんとアコちゃんの周りを吹き荒れ、２人のスカートを捲り上げた。
「イヤーン！！エッチな風！！」
「私達の周りだけ吹いてるわ！！どうなってるの！？」
「ははははは！！良いぞ！！それーっ！！」
風になった怪物くんとヒロシくんは、すっかりお調子に乗っていたが、その時――
「ハーイ！！エッチな悪い風はワタシが止めてあげるネー！！」
突如第３者の声がした。怪子ちゃん達がその方を振り向くと、そこには中国服の１人の少年の姿があった。
「な、何だ？体が動かないぞ･･･？」
少年が人差し指を立てると風はおさまり、空中から実体化した怪物くんとヒロシくんが落ちてきた。
「まあ、あなた達のイタズラだったの！？」
「ゴメンね、アコちゃん。キミにボクの姿が見えないと思うと、つい･･･(苦笑)」
「オレもヒロシに同じ･･･悪いな、怪子ちゃん･･･(照笑)」
「呆れたわねえ、他の女の子に対してデレデレするくせに！」
「ヘイ、彼女達。彼氏を責めちゃイカンよー。イタズラやスカート捲りは、好きな子に対する男子の愛情表現ネー。ワタシも好きな子いるから彼氏達の気持ち、よーくわかるヨー」
爽やかな笑顔で少年に見つめられて、怪子ちゃんとアコちゃん思わずホッペを赤くした。
考えてみれば、誰だってそうだ。例え本命がいても、素敵な異性を見れば思わず好意や憧れの念を抱くもの。
それは相手が良い人だと思えばこそであり、浮気心とは別物の感情と分っているはずなのに･･･。
「ところで、お前。ミョーな力を持っているが、まさか怪物族じゃあるまいな？」
怪訝そうな顔で問う怪物くんに、少年はやや不機嫌そうに答えた。
「失礼ナー！ワタシ、風使いの田端小狼(しゃおらん)。これでも、ちゃんとした人間ヨー！そー言うキミこそ、風に姿変えたり怪物じみてるネー！」
「その通りさ。オレは怪物の王子だもん！」
「･･･何か変わった子だけど、取り合えずヨロシクねー♪」
と、細かい事にはお構い無しに一同と和解してしまう小狼くんであった(笑)。
★ ★ ★ ★
「さっきはゴメンなさい。例え浮気心からじゃ無いと分っていても、私としては他の女の子にデレデレするヒロシくんを見るのは堪らないの。だから、あなたにもそれを分って欲しくて･･･」
「私こそゴメンなさい。無神経だったわ、あなたにキスされて赤くなった怪物くんを見て、初めてあなたの気持ちが分ったの。でも、私もつい意地張っちゃって･･･」
「これからは、良い友達になりましょうね」
「ええ。こちらこそ、喜んで」
怪子ちゃんとアコちゃんが仲直りの握手をすると、傍で怪物くんとヒロシくんが囃し立てた。
「よっ！ご両人！！」
「女の子って、すぐ仲良くなっちゃうんだね」
「何言ってんの！元をただせば、争いの原因はあなた達でしょ！」
「これから他の女の子にデレデレしたら、思いっきりお尻つねってやるわよ！」
「「はいっっ！！(冷汗)」」
２人の美少女に凶悪な面構えで睨まれ、少年２人は顔面蒼白になるになるのであった(爆笑)。
「･･･(汗)。さー、みんな仲良くなったお祝いに喫茶店でパーティーしよーネー」
「良いわねー。小狼くんも一緒に行きましょ♪」
「両手に花よねー♪」
「ははは、サイコーねー♪(でもワタシ、本命は空ヨ♪)」
「ちぇーっっ！面白くねえの！」
「ボク達には他の子にデレデレするなって言ったくせに！」
「「何か言った？」」
「「いーえ！別に！！」」
この自己中心的なところが如何にも女の子らしい２人ですが(笑)、とにかく皆納まるところに納まって、空では明るい太陽が５人を暖かく照らしておりました。めでたし、めでたし。
(完)
オマケ
夕方。シャオが空の家に晩飯を食べに行った時のこと。
「シャァァァオォォォ･･･」
「！空、どうしたカ？そんな怖い顔しテ･･･」
「さっき鈴に電話で聞いたんだけどォ、アンタ知らない可愛い女の子２人と一緒に喫茶店に行ったんだってェ？」
「！！！ご、ごめんなさい〜！！許してぇぇぇ！（泣」
「問答無用じゃぁぁぁい！！」
この後シャオの姿を観た者は居ない･･･(笑)
(ホントの完)