(協力：ハナさん)
その日はケムゾウにとって、非常に長い１日となった･･･(汗)。
ケムゾウは、いつも通り学校から帰宅すると部屋の中に入って行ったが、今日に限っていつもと違う点が１つだけあった。部屋に入ると影千代がいるという点だけはいつも通りなのだが･･･。
「お帰りなさいませ、ケムゾウ様♪」
「ヒ、ヒバリ！？どうして、ここに！？」
部屋の中には思いがけない珍客がいた。
年頃はケムゾウと同じ位、赤い忍び装束をまとった一見してくの一と分る１人の少女――
彼女の名は甲賀のヒバリ。
ケムゾウとは幼なじみで、甲賀の里にいた頃からケムゾウを慕っている純愛少女忍者である。
「いきなり押し掛けてゴメンなさい。私、見知らぬ土地でたった１人で修行に励んでいるケムゾウ様が気になって･･･」
「いらん心配をするな。オレの事は大丈夫だ、影千代もいるしな･･･親御さんが心配するから、早く甲賀の里に帰れ」
ケムゾウに、影千代が口を挟んできた。
「ご主人様ー。せっかく来てくれたんだから、すぐに帰す事無いニャリンよ。ヒバリちゃんは家事が上手いから、当分ここに厄介になってもらうと良いニャリーン」
「バカ！無精な事を言うな！！」
「だって〜。ワシだって、たまには息抜きしたいニャリーン」
「そうですとも、ケムゾウ様。影千代ちゃんにも、少しはお休みをあげて下さいな。今日は私が掃除も洗濯もしたんですのよ。ほら」
ヒバリが指した窓の外のベランダには、竿に干され風に揺られている数枚の緑のフンドシが･･･(爆笑)。
「だぁ〜〜〜〜〜〜っっ！！そんなもん、外に干すなーーーーっっ！！」
ケムゾウは慌ててフンドシを取り込み、影千代に文句を垂れた。
「影千代！！お前、何でヒバリを止めなかったんだ！？」
「良いでニャイか、ご主人様。今日は天気も良いし♪」
「そんな問題か！ドアホ！！(くそ〜、日頃の恨みか･･･？)」
やってられなくなったのか、ケムゾウは外へ出ようと玄関へ向かった。
「ケムゾウ様、どこ行くの？」
「散歩！」
「良いですねー。私も行きますわ♪」
「ついて来なっっ！！！！」
それでもケムゾウについて行く一途なヒバリであった。この先、どうなる事か･･･。
★ ★ ★ ★
「ついて来るなよ！お前のその格好は目立つんだから！」
「大丈夫♪人が来たら隠れますから」
「･･･って、言ってる側から人が来たぞ！隠れろ！！」
ヒバリが塀の影に隠れると、そこへやって来たのはクラスのアイドル・河合夢子。
「ケムマキくーん。今日はノート貸してくれて、ありがとう。お陰で助かったわ」
「あ、良いよ、それぐらい。困った時はお互い様だから」
「ケムマキくんには、本当にいつもお世話になって･･･」
「いやあ、何･･･へへへ♪」
クラスのアイドル夢子に見つめられて、ケムゾウもタジタジ(笑)。それを塀の影から覗いていたヒバリは･･･。
『何て事なの･･･！！ケムゾウ様ったら、寄りによってあんな女と･･･！！よーし！！』
「じゃあね、ケムマキくん」
と、その時――
去って行こうとする夢子ちゃん目掛けて、ドロの詰まった袋が礫のように襲い掛かってきた。
バシャ！バシャ！バシャ！！
哀れ、夢子ちゃん･･･ヒバリが投げ付けたドロ袋を受けて、全身ドロまみれ･･･。
これぞヒバリの必殺技！甲賀忍法・泥縛り！！
「･･･！！だ、大丈夫かい？夢子ちゃん･･･！！」
「ひどーい！！どうなってるの！？」
ドロまみれの夢子ちゃん、大慌てでその場を逃げ去ってしまった。ケムゾウはその様子を呆然と見ていたが、塀の影から笑いながら出てきたヒバリを見て険悪な表情になった。
「ヒバリ･･･今のは、お前の仕業か･･･？」
「そうですわ。ケムゾウ様に近寄る女なんか、片っ端から･･･」
「バカ！！」
パァン！！
ケムゾウの平手がヒバリの頬に飛んだ。
「何て事しやがるんだ！！お前がそんな陰険な女とは思わなかったぞ！！もうお前の顔なんか見たくもねえ！！
とっとと甲賀の里に帰れ！！」
ケムゾウはそれだけ言い放つと、さっさとその場を立ち去ってしまった。後に残されたヒバリは泣きながら屋根伝いに飛び去って行った･･･。
★ ★ ★ ★
「ニンニンニンニン･･･今日も元気に修行に励むでござる。ニンニンニン･･･」
やって来ました、我らがハットリカンゾウ。今日も休まず修行に励んでおりました。
と、その時屋根の上で泣いている１人の少女を発見！
「どうしたでござる？」
ハットリくん、気になって屋根に飛び移り、少女に声を掛けた･･･。
「まったく、ご主人様ったら自分でヒバリちゃんを泣かせておいて、心配だからワシに探させるなんて･･･
そんなに心配なら自分が探せば良いニャリン！！」
ケムゾウにヒバリ探しを任された影千代がブツブツ文句を言いながら町中を走り回っていた。
ヒバリの匂いをたどって行くと、ケン一の家の前に来た。窓をのぞくと、ハットリカンゾウが悲しそうなヒバリを慰めていた。
何だか良い雰囲気に見える。
「これは一大事ニャリン！！」
影千代は大急ぎで家に戻り、ケムゾウに知らせた。
「何っっ！？ヒバリがハットリと一緒だと！？」
「早く何とかしないと、ヒバリちゃんが伊賀者に取られるニャリン！」
バヒューーーーーーン！！
ケムゾウは猛スピードでケン一宅へ走った(時速119キロは出ていたであろうか･･･？)。
★ ★ ★ ★
「ヒバリ！！」
「ケムゾウ様！！」
玄関では無く窓から飛び込んできたケムゾウに、ヒバリが泣きながらすがって来た。
「おい、ハットリ！！ヒバリにミョーなマネはしなかったろうな！？」
「何もしてないでござる！拙者はただ慰めていただけでござる！」
「ヒバリ、さっきはオレが言い過ぎた。頼むから戻って来ておくれ」
「私の事、許して下さる？」
「ああ、許す！」
「嬉しい！！だからケムゾウ様、だ〜い好き！！」
チュッ！！
ヒバリからいきなりキスを貰って、硬派のケムゾウもさすがに決まり悪そう･･･。
「帰るぞ、ヒバリ！」
「はい♪」
仲良く連れ立って帰っていくケムゾウとヒバリを見送りつつ、ハットリ達は･･･。
「よー！色男ー！」
「２人で仲良くやれよー！」
「うる星っっ！！」
冷やかす一同に毒付きつつも、ケムゾウは照れながらヒバリと去って行った。
「あの２人、結構良いカップルなんじゃない？」
「これからも上手くやっていく事を祈りたいでござる。ニンニン」
(完)
ケムマキケムゾウの幼なじみのヒバリちゃんは「名探偵コナン」のサイトをしておられたハナさんという方の原案を元に私がキャラクターデザインしました。果たして、ご期待に沿えたかどうか･･･。
原案者が違いますので、私の描いているのと次元が異なる世界のケムゾウですが、どうかヒバリちゃんと仲良くやって欲しいです。
ちなみに現在、ハナさんとは交流が無くなってしまいました。