ここはある平和な街中。空は晴れ渡り、小鳥は歌い、今にもタケちゃんマンが泳いで来そうなうららかな天気であった。
そんな平和な気分を打ち破るかのように、おおーーーーーっっ！！空を見ろ！鳥だ！飛行機だ！あっ！タケちゃんマンだ！！では無く、ある小学校の塀の上から一人の後ろ毛をくくった10歳位の少年が飛び降りて来た！！
その後ろを、彼の担任教師と思しい男性が校門から飛び出して追いかけて来た。パンチパーマでだだっ広いメガネを掛け、口はデコボコ、どう見ても女性にモテるタイプでは無い(悪いか！！)。
「待てーーーーっっ！！ケムマキケムゾウ！！待てーーーーっっ！！待てーーーーっっ！！待て待て待てーーーーーーーーーーっっ！！
待て〜〜〜〜〜い！！」
「うるせえなあ！！一回言やあ解かるってんだ！！(もっとも、言っても待ってやらないけどね♪)小池先生そう怒りなさんなって。たかが、黒板にチョイとばかし落書きしただけじゃないか」
「だまれ！エヘン虫！！お前の悪事はそれだけでは無ーい！！トイレの紙を糊付けするは、給食のパンにラッキョを仕込むは、机の引き出しに蛙を入れるは、えーい！まだまだあるぞ！！この間は職員室のワシの椅子の上にブーブークッションを置きおって！！おかげでワシャ、愛子先生に…」
「先生、どうでもいいけど前見た方がいいぜ！！」
どっしゃ〜〜〜〜〜ん☆☆☆！！
何とそこはT字路。ケムマキケムゾウは角を曲がって走り去ったが、哀れ教師小池は前方の塀に激突！！ただでさえ女性にモテそうに無い顔がペシャンコにへしゃげて、一層ヒドイ顔になった。無残……！
「うーーーーっっ！！ケムマキめ、どこへ逃げおった……」
教師小池はヨレヨレになりながらも、執念深く少年の行方を探した。まさに教師の鑑である(見習おうぜ！)。すると塀の隅のゴミ箱の陰から少年の小さな丸い尻が覗いていた。
「ふっふっふっふっ……ガキンチョめ、それで隠れているつもりか！」
教師小池は傍にあった棒を取り、少年の尻に振り下ろした！
がっしゃ〜〜〜〜ん☆☆☆！！
ブーーーーーーン！！
「うひゃあ〜〜〜☆★☆★」
少年の尻と思っていたのはズボンと靴だけ。おまけに何と蜂の巣が仕込んであった。哀れ教師小池は顔面クマ無く蜂に刺され、ますます女性にモテるどころでは無くなった。ほとんどマタンゴである(知らない人は怪獣図鑑で調べよう)。
「とほほほ…何でこうなるの！？」
「だははははは……ちょっとやり過ぎちゃったかな？」
小池の被害現場からやや離れた空き地の土管の上で、ケムマキケムゾウが高笑いしていた。ちゃんとズボンと靴を履いてるところを見ると、あれはイタズラ用に予備に用意されたものらしい(良かった、下半身丸出しじゃなくて！)。
「さっきからズーッと見てたわよ。自分の先生に随分とヒドイ事するじゃないの」
「ムムッ！？誰だ！名を名乗れ！！」
突如聞こえた女の声にケムゾウが振り向くと、後ろに15歳位の美少女が立っていた。
「あなた、そんな事してて良いのかしら？学校に通ってる身で先生にイタズラして、授業にも出ずにこんな所でブラブラして」
「うるせえなあ、オレが何をしようとオレの勝手だ。そう言うアンタはどうなんだよ」
「私の学校は創立記念日でお休みなの。あなたとは違いますよーだ。他人の事言ってないで、早く学校に戻って先生に謝ってらっしゃい」
「やなこった！あの先公、オレが中学生の不良をケチョンケチョンに延してとっちめてやったら、褒めるどころか説教しやがった。向こうが先に手を出して来たのによ！で、その仕返しをしてやったまでさ。」
「どんな理由があるにしても暴力はダメでしょ？」
「うるせえなあ、ヘタな説教は耳ざわりだぜ！」
ケムゾウはそう言うと、何と！魔法のように一瞬に姿を消した。ケムゾウは町中を目にも止まらぬ速さで走り、信じられないジャンプ力で屋根から屋根を飛び越えた。一体彼は何者なのか？
「ふう…。ったく、人のやる事にケチつけやがって！ああいう型にはまった考え方しかできない良い子ブリッ子の女って大嫌い！」
「良い子ブリッ子で悪かったわね」
「どひゃっっ！？」
ケムゾウが振り向くと、例の少女が立っていた。ケムゾウは慌てて再び姿を消した。
「ウソだろ？あのスピードに追いつくなんて…」
事態が信じられないながらもケムゾウは、先程より遠い場所へ屋根を飛び越え猛スピードで移動した。
「ふう…。さっきは変な幻を見ちゃったぜ」
「幻じゃ無くってよ」
「どひぃーーーーっっ！？」
後ろを振り向くと、またしても先程の少女が！？彼女も一体何者！？
「オレのスピードに追いつくとは、お前ただ者じゃ無いな！！何者だ！！」
「あら、人に聞く前に自分の素性を名乗るのが礼儀じゃないかしら？」
「オレはケムマキケムゾウ、甲賀の忍者だ！さあ、こっちが名乗ったんだからそっちも名乗れ！！」
「やっぱりあなたも忍者なのね。私は日向ミカ。私だってこう見えても日向流のくの一よ」
「くの一！？するってえと女忍者！？」
ケムゾウが言うが早いか、日向ミカは一瞬の早変わりで忍び装束となった。
「さあ、わかったらもう私に降参しなさい。ハッキリ言って私の腕の方があなたより上よ」
「ヘン！それはどうかな！？」
ケムゾウはミカに向けて催眠念波を発した。ミカの目は虚ろになり、その場に棒立ちになった。
「へっへっへっ、くの一なんて威張ってたってオレに掛かればチョロイもんだ！さあ、このままオレをオンブしてオレの家まで運べ！」
「はい…」
ミカはケムゾウをおぶって歩き出した。
「へっへっへっ、ラクチンラクチン…って、ん！？あれ！？おい！！
だあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っっ☆☆☆！！！」
ケムゾウはいつの間にやらミカの背では無く手押し車の上にいた。手押し車は坂道を転げ、そのまま真っ直ぐドブ川に直行していた。ケムゾウは逃げようとしたが、足を金縛りに掛けられているらしく立ち上がろうにも立ち上がれない。
「うわあぁ〜〜〜〜〜〜っっ！！！」
どっぽぉ〜〜〜〜〜ん！！
哀れケムゾウはドブ川の中！！全身真っ黒！！天罰覿面！！自業自得！！
「わかった？あなたは私を催眠に掛けたつもりでしょうが、逆にあなたの方が私に掛けられてたのよ。さあ、これに懲りたら私と一緒に先生に謝りに行きましょう」
「先生、この薬は蜂の毒に効きますのよ」
「何と、お優しい…。ひょっとして、あなたはボクのママではないですか？」
「失礼ねっっ！！」(バキッッ！！)
「ふっふっふっふっ、ご主人様もさすがにあの女の子には頭が上がらないニャリンね〜」
「うる星！！ちっくしょぉ〜〜〜〜〜っっ！！今に見てろよぉ…！！」
ケムゾウの着替えを届けに来た彼の飼い猫・影千代(彼も忍者猫である)と遣り合いながら、ミカへの逆襲を誓うケムゾウであったが、この先どうなる事やら…。
(続)
読者の皆さん、こんにちは。A-chanです。
「甲賀忍者天下御免！！」第１話いかがでした？原作やアニメの普段のケムゾウは、大人しい良い子ちゃんに描かれておりますが、私は創作のケムゾウを普段から自分を隠さず「地」で行動するイタズラ好きで暴れん坊な少年に描いております。
私としては「地」の彼の姿の方に魅力を感じますし(呼び方は同じでも「痔」の彼は嫌です：笑)、せめて私の創作の世界の中でだけでもケムゾウにありのままで生きさせてあげたいですからね……。
ここで私の創作のケムマキケムゾウの設定をちょっとご紹介。
小学四年生。甲賀の少年忍者。学業成績良く、運動面でも長けているが素行悪く、イタズラと脱走の常習犯(笑)。一途な熱血漢で、自分の正義に沿わない者は弱きも強きも挫く。クラスメートの三葉ケン一と担任教師・小池が最大の犠牲者(笑々)。
ちなみにその時の私は侍ジャイアンツの影響で、ケムゾウの誕生日を４月４日午前４時４分としておりましたが(オレの誕生日は「死」だ！！：笑)、今思うとあまりにも不吉なので、この設定は削除しました。
ちなみに、４月４日は通称「オカマの日」だったりします(笑)。