「へっへっへっ、授業が退屈だから抜け出してきちゃったぜ！なんか面白い事無いかなあ…」
またいつもの如く、ケムマキケムゾウが町中をさまよっていると、何やらセーラー服の一群がたむろしているのが見えた。
「なんだなんだ、あの連中は。こんな時間に学校行かずにうろついてるところを見ると、ロクな連中じゃないな」
そう言う自分はどうなんだと言いたくなるが、そんな筆者の考えなどお構いなくケムゾウは一群の方へ、ソーーーッと近づいて行った。不良女子高生と思しいグループの中央に、小学生位の少女が取り囲まれていた。
「なんだ、ありゃ北の海小のスケ番ピピじゃねえか。一体何があったんだ」
スケ番ピピ。北の海小学校４年生。可愛い見掛けとは裏腹に、その暴れっ振りは凶暴そのもの！中学生、高校生相手に戦う姿は「北の海の女王」の異名を取る程の凄まじさで、そのスゴさは甲賀忍者のケムマキケムゾウも呆れ返る程。
「いつぞやの、どこぞのゴツイ男の高校生の不良番長をかっ飛ばしたのを見た時は、ぞーーーっとしたよなあ…はははは」(笑ってる場合か！！)
そのピピが、また何かどこぞのスケ番グループとトラブルを起こしたらしい。
「ピピちゃん、この前はよくも私をコケにしてくれたねえ。この落とし前はキッチリ付けてもらうから覚悟しな！」
「てやんでえ！一人じゃかなわないと思って仲間を連れてきやがって！お前らみたいなのが何人掛かって来たってアタイの敵じゃないよ！そっちこそ覚悟しな！」
「おいガキ！小学生のくせにナマイキだぞ！！」
「ふっふっふっふっ…いい度胸じゃないか。みんな、遠慮はいらないからこのおチビさんを思いっきり痛振って…
痛振って…ん？
ひえぇぇぇ〜〜〜〜〜☆☆☆！！！」
女子高生番長が足元を見ると、ケムゾウがにしゃがみ込んでスカートを捲っていた。
「このガキ！番長になんて事を…！！あっ…」
ケムゾウが素早く避けたので、配下の不良女子高生は勢い余って路上にズデーン！
「ギャン☆☆☆！！！」
「なーんだ。そんな長いのはいてるからダイコン足かなんかだと思ったら、なかなか良い足してるじゃない。オネーちゃん♪」
「ぬぬっっ！！こ、このガキ…」
「ケムゾウ……あんた、この前アタイに加勢してくれたケムマキケムゾウだね！」
「覚えててくれたかい？ピピちゃん」
「ふん！余計な事してくれて！あの時はアタイ一人でも勝てたんだよ！」
「強がり言っちゃって！もうちょっとのところでやられそうだったじゃねえか！人の親切は素直に受けた方が…」
「ウダウダ言い合ってる場合じゃ無いよ！お二人さん！！掛かれ！！」
女子高生番長が言うが早いか、配下の不良女子高生達が一斉に二人目掛けて襲い掛かってきた！！
「おっと、話は後だぜピピちゃん！！」
「ふん！あんたなんかに負けないよ！！」
かくして、不良女子高生軍団VSたった二人の小学生の戦いが始まった！！
「おりゃあぁーーーーーっっ！！チビだからって容赦しないよ！！」
「そっちこそ女だからって手加減しないぜ！！」
おおっっ！！強い強い！！ケムゾウとピピは年上の女子高生達を次々ノックアウトしていった！！
何とも末恐ろしい子供達…。
「可愛い顔してやっておくれだねえ、コケシちゃん。私は他の連中とは一味違うよ」
スケ番グループのサブリーダーと思しい女子高生が、二枚歯のカミソリをギラつかせながらケムゾウに迫ってきた。
「えやっ！たーっ！はーっ！」
素早いカミソリ攻撃を難無くかわしながら、ケムゾウはその小さな丸い尻を女子高生の鼻先に押し当てた。
ぷす〜〜〜〜〜〜っっ！！
「いやーーーん！！この子ったら！！」
「ははははは！！油断大敵屁の用心！！」
一方、こちらではピピが女子高生番長に追い詰められていた。番長は分銅つきの鎖を振り回しながら徐々に迫って来る。危うし！！
「いかん、このままじゃピピが危ない！よーし…」
ケムゾウは懐からウイスキーのボトル(！)を取り出し、その場でラッパ飲みした(！！)。
「うぃ〜〜〜〜〜い！ひっく！！」
ケムゾウは千鳥足で、番長とピピの間に入った。
「ケムゾウ！！」
「何だい、坊や。酔拳のつもりかい？」
ケムゾウ、100円ライターに火を付け口元に持っていくと、女子高生番長目掛けて火を吹きかけた！！出た！！これぞ忍法火炎放射の術！！
「ひいぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜☆★☆★！！！」
女子高生番長、慌てて逃げながらも鎖を振り回し火を弾いた。ウーム、敵ながらアッパレ！！
「こうなったら、お前のアルコールの貯蔵量と私の体力のどちらが先に尽きるか勝負だ！！」
女子高生番長は勢い良く鎖を振り回していたが、だんだん肩で息をし始めついに力尽きた。
ぼぼぼんっっっ！！！
哀れ番長丸コゲ！髪や服をくすぶらせ、口から煙を吐いている。
「ふう…こっちも酔いがさめちゃったぜ」
「おぬぉれクソガキィ〜〜〜〜！！どうするか見ておいで〜〜〜〜〜〜！！」
「どうやら本気で怒らせちゃったみたい。こういう場合は…逃げるが勝ち！！」
「待てぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い！！！」
ケムゾウは公園の中に逃げ込むと、池の前に立っている木によじ登った。すかさず番長も後に続く。ケムゾウは枝先に追い詰められた。
「ふっふっふっふっ…後が無いよ！お前の負けだね！」
「そりゃどうかな？」
ボキッッッ！！！
ケムゾウと女子高生番長、二人分の重みに耐え切れず枝が折れた。
だっぱぁ〜〜〜〜ん！！！
二人は公園の池の中に落ちた。
「たっ、助けてぇ〜〜〜〜〜〜っっ！！私泳げないのよぉ〜〜〜〜〜〜っっ！！」
溺れている番長を尻目に、ケムゾウは池の縁に泳ぎ着いた。
「ははははは！！オレの捨て身の攻撃思い知ったか！！…ヘークション！！ちょっと水に飛び込むには早すぎたかな？…何だ、こりゃ？？」
流れて来た物を摘み上げて見ると、何と番長のスカートであった…。
その翌日、ケムゾウが野原に寝そべってタバコを吹かしていると、ピピが近づいて来た。
「タバコよこしなさい」
「取り上げるのかい？」
「バカねえ、吸うのよ！一本ちょうだい」
ピピはケムゾウの差し出したタバコを一本取ると、ケムゾウのタバコの火で火を付けた。
「何の用だい？昨日の礼を言いにきたのかい？」
「バカ言ってんじゃないよ！アタイはあんたに勝負を挑みにきたんだ。不良高校生でさえ歯が立たないあんたを倒せばアタイにもハクが付くというものさ」
「とか何とか言っちゃって、ホントはオレに気があるんじゃないか？」
「やかましいっっ！！行くよ！！」
スケ番ピピは、くわえタバコでヌンチャクを振り回してきた。
「うひゃっ！こりゃ逃げるに限る」
ケムゾウもくわえタバコで逃げ出したが、その際ロープが足に引っ掛かった。
どっぱぁ〜〜〜〜ん！！！
ケムゾウとピピの頭上に水の入ったタライが落ちて来た。おかげで二人とも全身ずぶ濡れになった。
「ヘーーーーーックション！！何なんだ！？こりゃあ！！」
タライの裏にはこう書いてあった。『小学生がタバコ吸っちゃダメよ 日向ミカ』
「あのアマ、またやりやがったな！！」
「どーでもいいけど何でアタイまでこんな目に合うんだいっっ！！」
この先ケムゾウには、まだまだ苦難が続きそうである。
(続)