今日の１時間目は体育の授業。一見のどかな風景に見えるが、そこに我らがケムマキケムゾウがいる限り、平穏無事ですむ訳が無い。また一嵐吹き荒れそうである(えへへへへ……)。
「今日はハンドボール投げのテストをする。まずはケムマキ、お前から投げてみろ」
「え？投げていいの？」
「ああ、思い切り投げてみろ」
「では、投っげまあ〜〜〜〜〜〜す！！」
どっしゃあ〜〜〜〜〜〜〜ん☆☆☆！！！
出たア！！見事な一本背負い！！ケムゾウに投げられた教師小池はモロに校舎に叩き付けられた。
「バッカもぉ〜〜〜〜ん！！誰がワシを投げろと言った！！ボールだ！！ボールを投げろ！！」
「あ、ボールね。最初からそう言ってくれなきゃ」
「言わんでも常識じゃ！！」
「はいはい、わかりました(知っててワザとやったんだい)。」
「よーし、投げた距離を測ってやるから、今度こそ思い切り投げてみろ」
と、小池は一番遠くの線まで下がって叫んだ。
「では第一球、投げました！！」
ばっひゅ〜〜〜〜〜ん！！
スゴイ！スゴイ！！ケムゾウの投げたボールは、風を切って唸りを上げて飛んで行った(時速」１１９キロかな？)。
ばっこぉ〜〜〜〜〜ん！！
ボールは小池の股間を直撃！！哀れ、小池は泡吹いて延びた。
「ありゃーっ！ちょっと遣り過ぎちゃったかな？ははははは、気にしない気にしない」
自分が気にしろ！！
「こ、これから50メートル走をする。みんな位置に付け…イタタ」
教師小池は股間を抑えつつも体育の授業を続けた。スゴイ教師根性である。見習おうぜ！
「やっほー、オレ走るの大好き！」
「お前はバツとして逆立ちして走れ！！」
楽しそうにはしゃぐケムゾウに、小池は意地悪くも決して誰にも出来そうも無い事を命じた。ただし、それは普通人の場合であり、我らが無敵の甲賀忍者ケムマキケムゾウは一味違っていた。
「そんならそうさせていただくよ。それーーーーーーっ！！」
ばっひゅ〜〜〜〜〜ん！！
スゴイ！スゴイ！！ケムゾウは逆立ちしたまま猛スピードで走り出した！！そんでもって、勢い余って他の走っている生徒達まで跳ね飛ばしてしまった。
「こりゃあ〜〜〜〜〜っっ！！ケムマキ〜〜〜〜〜ッッ！！」
「授業が終わるまで、そうやって立っとれ！！」
お調子に乗り過ぎのケムマキケムゾウ、頭にサッカーボールを乗せられて体育倉庫の脇に立たされた。
「冗談じゃねえ。こんなところでジッとしてられますかって」
ケムゾウは服を着替えると、その足で学校を抜け出した。
「あー、何か面白い事無いかなあ…」
毎度の事ながらケムゾウが町中をさまよっていると、何やら黒い人だかり。よく見ると、金髪の美少女が複数の男達に取り囲まれていた。
「秘密捜査官如月ハニー！その箱の中身、我々に渡して頂こう！」
「絶対にお断りよ！あんた達に渡すもんですか！」
「仕方が無い。ならば腕ずくで……」
「あのー、お取り込み中失礼ですが」
「どわぁ〜〜〜〜〜っ！！」
いつの間にやら現れたケムゾウに、一同おののいた！
「そんなに驚く事無いでしょ？人をオバケみたいに……」
「何者だ！小僧！！どこから現れた！？」
「坊や、危ないから下がってなさい」
「ええい、面倒だ！！その小僧も一緒に片付けてしまえ！！」
黒い背広の男達が、ケムゾウと美少女目掛けて襲い掛かって来た。
「やっほー、遊んでくれるの！？」
ケムゾウは大人の男相手に激しいドンパチを演じ、次々に打ち倒した。さすが甲賀忍者！！そして後ろから来た相手の鼻先に尻を押し当て、
ぷす〜〜〜〜〜〜っっ！！
「イヤーン！バカーン！！」
「ははははは！！結構屁だらけ猫灰だらけ！！」
一方、金髪の美少女も少女とは思えない見事な技で敵を打ち倒していた。しかし、背後からナイフを持った敵が迫って来た。
「わわっ！危ない！！忍法煙出し」
ケムゾウは煙玉を投げ付けた。
どっかーーーーーん！！！
「ゴホッ！ゴホッ！ゴホッ！…」
「ゴホンと言えば龍角散」
「遊んでる場合か！！あの二人はどこだ！？」
煙がはれた後、すでに二人の姿は影も形も無かった。
「助けてくれてありがとう」
「オレ、ケムマキケムゾウ。あんた、どうして追われてたの？」
彼女、国際秘密捜査官如月ハニーは、某国の女王陛下が日本に滞在中ホテルに置き忘れてきた大切な物を密かに女王配下の秘密警察に手渡す途中、女王に反する者達の襲撃に遭ったらしい。
「反政府派の狙いはこれをネタに女王陛下を脅し、王国を自分達の意のままにしようとしているのよ」
ケムマキケムゾウ密かに思った。
(恐喝のネタになるような代物だから、よっぽどプライバシーなものらしいな。下着の類とか…。この人もかわいそうになあ、オバハンのズロースを守る為に命賭けなきゃならんなんて…)
「よし！一緒について行ってやろう！オレがあんたのザ・ボディーガードになってやる！」
「そんな！危ないからやめなさい。」
「いいから、いいから…」
言い合う内に、二人は秘密警察との待ち合わせ場所である港までやって来た。そんな様子を遠くから見つめる怪しい複数の影があった。
「ボス、あいつです。我々の邪魔をしたのは…」
「なんだ、お前達を一網打尽にしたと言うからキングコングみたいな奴かと思ったら、あんな小僧か！？情けない！！もう一度行って、女王のナニを奪って来い！！」
「そんな殺生な〜っ。まだ先程の傷も癒えてないのに〜っ」
「行けぇーーーーーっっ！！」
「はっ、はいぃーーーーーーーーっっ☆★☆★！！」
(あたふた☆★☆★)
マヌケな悪者軍団は、再びケムゾウとハニーに襲い掛かった。
「おーーーっっ！！また遊んでくれるの！？」
ケムゾウは、向かって来た相手の腕を掴み、
「第一球、投げました！！」
どっしゃあ〜〜〜〜〜〜〜ん☆☆☆！！！
またまた見事な一本背負い！！投げられた男は、近くのラーメン屋の中にモロに突っ込んだ｡二人は次々に敵を打ち倒していった。が、
「きゃあ〜〜〜〜〜っっ！！エッチ！！」
敵にオッパイを羽交い絞めにされたハニーが、女王のナニを落としてしまった。それを別の敵が拾い、ボスと共に自動車で逃げた。
「逃がすか！！」
ケムマキケムゾウ速い！速い！！途端に敵の自動車に追い付き、窓ガラスを指で叩いた。
「なんだ？」
助手席に座っていたボスが思わず窓を開けると、ケムゾウ空かさずボスの膝の上のナニを奪った。
「…何だったんだ、今のは？」
「あの子、このクルマと並んで走ってましたよ…」
「おっ、おいっ！！それより、ちゃんと前を見ろ！！」
「だあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ☆☆☆！！！」
ぐわっしゃあ〜〜〜〜〜〜ん☆★☆★！！！！
敵の自動車は電柱に激突！！大破した…。
「ありがとう、ケムマキくん。あなたのお陰で反政府派は全員逮捕され、女王陛下の秘密の品も守られたわ」
「いやあ、それ程でも…(あるよ)」
「女王様に連絡して、お礼をしないと…」
「まあ、オレへの謝礼はちょっと高く付くな」
「…いくら？」
「焼き芋５0個分ってところかな」
「…いいわ、いいわよ。50個分でも100個分でも、好きなだけ貢いで差し上げるわ！(なんて安上がりな子なの！)」
「ところで、女王様のナニってどんな物？」
ハニーは、箱の蓋を開けて中身を見せた。
文字通り、女王陛下のナニ！！どうやら、反政府派を罠に掛ける為の囮作戦だったらしい。
「こっ、こんな物を守る為に戦わされたのか！？」
「良いじゃない、お陰で反政府派を一掃できたんだし。はい、これはお礼の金一封。いずれ女王様から感謝状が届くと思うけど、もう二度と危ない事に首を突っ込んじゃダメよ。それじゃ…」
ハニーと別れた後、ケムゾウは封筒の中の謝礼金を覗き込み、感激の声を上げた。
「うっひょお〜〜〜〜〜〜♪♪♪これだけあれば、当分遊んで暮らせるぜ！焼き芋よりソフトクリームが良いかな？それともタコ焼きか御手洗ダンゴか。ジュースも飲み放題だな…。遊園地でもゲームセンターでも遊び放題…」
「あーーー…ちょっと、ちょっと…！！」
突然、第三者の声がした。振り向くと、先程悪者を投げ込んだラーメン屋の主人が渋面で立っていた。
「チミ、ケンカの最中にワタシの店ブチ壊してくれたアルね！？修理代、弁償して貰うアルよ！！」
「ひえ〜〜〜〜〜〜〜☆☆☆！！！」
ラーメン屋の主人は、謝礼金の入った封筒をふんだくると、早々に立ち去って行った。
「くっそぉ〜〜〜〜〜〜っっ！！何でこうなるの！？ハニーちゃーーーーん！！また事件が起きたら呼んでくれよーーーーっっ！！」
ケムゾウの声が、虚しく空にコダマした。ははははは…(笑うな！！)。
(続)