その中庭の木の下に、まだ一年生と思われる一人の生徒が立っていた。優しい顔立ちで、髪をお河童にしているのでちょっと見たところ少女のように見える。
「おーい、安理ー！！」
そこへ、また別の生徒がやって来て、先程のお河童の少年に声を掛けた。こちらは二年生と思われるが、混血なのか茶色っぽい髪の色をしている。彼も少女のような顔立ちをした中性的な美少年ではあるが、こちらはかなり強気な感じがする。
「お前が貸してくれたチェッカーズのLP、録音済ませたから返すぜ」
「はい、どうも。夕樹さんは音楽聴くの好きですからねえ。良い曲の入ってるレコードがあったら、いつでもお貸ししますよ」
少年達の名は立花夕樹と水島安理。夕樹は日本人の父とアメリカ人の母を持つ混血の少年で、将来の夢は通訳の仕事に付く事である。夕樹の後輩にあたる安理は、少々荒っぽいが正義感の強い夕樹の事を先輩というよりも兄のように慕っている。
「あのー…突然ではありますが…」
「わっ！！」
突然後ろから聞こえた声に二人が振り向くと、ヒョロヒョロに痩せたメガネの生徒が、棒立ちに突っ立っていた。彼の名は北野カカシ。立花夕樹のクラスメートである。
「何だよカカシ、人の後ろで直立不動で立ってんじゃねえよ！」
「立花くん、お取り込み中だけど、大岩先輩がまた不良グループと遣り合ってるよ」
「何だって！？そりゃいかんな、すぐ助太刀に行かないと」
「夕樹さん、ボクも行く！」
「ダメだ安理！お前は危ないから来るな！」
「すぐそうやってボクを邪魔者にする！ボクだって夕樹さんのお役に立てますよーだ！」
カカシの案内で夕樹達が駆け付けると、校舎の裏手で二人の生徒が他校生の不良グループと思しい集団と激しい乱闘を繰り広げていた。
大柄な生徒の方は大岩鉄次郎。三年生で夕樹達の先輩に当たる。もう一人は渋谷竜平。二年生で夕樹のクラスメート。鉄次郎の事を慕っており、常に行動を共にしている。
彼らの戦っている傍で、目付きの悪い二人の生徒がほくそ笑みながら見ていた。二人ともこの学園の生徒らしいが、どうもこの二人が不良グループの番長と腹心の部下らしい。
「こらーーーっ！！お前らたった二人に大勢で掛かりやがって！！卑怯だぞーーーっ！！」
叫ぶが早いか、夕樹は不良グループの中に飛び込み、見事な空手技で次々と不良を打ち倒していった。エキゾチックな見掛けに寄らず日本的である。
他の二人も負けてはいない。カカシは不良が掴み掛かって来ると素早くしゃがみ込んで攻撃を避け、いきなり直立の姿勢で立ち上がった。
ガツン☆★☆！！
カカシの頭が不良のアゴを直撃！！そのまま不良はKOされ、カカシは直立不動のまま両手を上げ勝利のポーズをとった。腕力沙汰は不得手な彼だが、その石頭の堅さだけは誰にも負けなかった(唯一誇れるものだね♪)。
安理も素早く不良の攻撃から逃げ回り、相手の後ろに回ると、そのキョロキョロ探し回っている相手の後頭部目掛けて、手にしたLPレコードを叩き付けた。
バキッッ！！
「いっけなーい！！お気に入りのレコード割っちゃった！！」
「おい立花！！これはオレ達の戦いだ！！お前達は引っ込んでいろ！！」
不良達を殴り倒しながら鉄次郎が叫んだ。
「何言ってんだ先輩！！アンタ一人じゃ手に負えんだろーが！！」
夕樹も負けずに言い返したが、その時彼らが争っているところを一人のメガネの男性教師が発見した。
「こらーーーーっ！！お前達、何やっとるかーーーーっ！！」
「ヤバイ！！引き上げろ！！」
番長の命令で不良グループは退散し、後には夕樹達五人が残った。
「またお前達か！！一体何回騒ぎを起こせば気が済むんだ！！」
「小野寺先生、我々は何も争いを起こすつもりは無かったんです。以前から先生に報告している通り、あの飯塚組は大人しい生徒を脅しては金を巻き上げるといった悪行を繰り返していましたので、我々が飯塚を問い詰めたところ、奴は手下を使って我々を襲わせました。それで止むを得ず応戦した訳です」
鉄次郎は小野寺に事の次第を説明した。この教師・小野寺は鉄次郎の担任で、同時に問題を起こした生徒達への教育指導も担当している。
「ヘタな言い訳はやめろ！！飯塚の父上は日本でも有数な資産家で次期市長候補で在らせられるお方だぞ！！本校にも多大な寄付をなさっておられるんだ！！そんなお方のご子息が、ゴロツキのようなマネをするか！！」
「ちょっと待てよ、先生！アンタの言う事は筋が通らんな。そんなご立派な御曹司が、何であんなガラの悪い連中を引き連れてるんだよ。オマケにこっちの方が少数だぜ」
小野寺の一方的な言い草に、夕樹は不満もあらわに反論した。この立花夕樹、見掛けはエキゾチックだがかなり昔気質の日本的なものを持っている。例え相手が教師などの権力者であっても、間違った事や曲がった事を言おうものなら、敢然と歯向かって行く。そこが彼の長所である。また、短所でもあるのだが…。
「えーい！！黙れ黙れ！！自分達が悪いのを棚に上げて、教師に意見するとは何事か！！良いか、今度揉め事を起こしたらお前達全員停学処分だ！！わかったな！！」
「まったく、ああいうエコヒイキな先公には頭に来るぜ！」
「ほんと！たくさん寄付してくれる家の子だと思ったら、悪さしようが見て見ぬ振りするんですから…」
竜平と安理の言葉に対して夕樹が異論を唱えた。
「寄付の事より世間体を気にしての事だろ。この学園の実体が世間に知れたら校長は勿論、教師である自分達の身まで危なくなるからな」
この博愛学園、初等部・中等部からなる私立男子校で、創立当時は秩序あるごく普通の学校であったが、飯塚が小学四年当時に転校して来てから校内の秩序が乱れ始めた。飯塚は普段は模範的な生徒を装っているが、一度裏に回ると気の弱そうな生徒や下級生を恐喝しては金や物品を巻き上げていた。
それを知った当時飯塚と同級生だった鉄次郎はその事を校長に知らせたが、飯塚の父親から莫大な寄付を受けている校長は鉄次郎の言う事を信じず、何を言っても取り合わなかった。
その為、鉄次郎が一人で飯塚相手に孤軍奮闘しなければならなかったが、もともと飯塚は弱い者相手にしか強気になれない男、鉄次郎を畏怖してか学園内で悪事を働く事はなくなった。
しかし中等部に上がり三年生になった今日、金を掴ませて味方に付けた他校生の不良(それも一年二年の生徒ばかり。さすがに同年代や年上の不良に対して配下になれと言うのは怖いとみえる)を引き連れ、鉄次郎への対抗意識も露わに再び悪行の限りを尽くし始めた。
「まあ、良いさ。ああいう奴らは裏で悪さをしていても、いずれはボロを出すんだ。その時は、校長や先生達も見て見ぬ振りはできんだろうぜ」
「そんな事より立花、これからはオレ達の闘争に首を突っ込む事は絶対に許さんぞ！オレ達の問題はお前達には関係無い！！」
夕樹に対する鉄次郎の言葉に、竜平も後から続いた。
「そうだ！！やい、立花！！お前は正義を気取ってカッコ付けてやがるんだろうが、お前がイチイチ加勢に来るって行為は、大岩先輩やオレに対する侮辱になるんだよ！！大岩先輩は奴らには負けないし、もしもの時にはオレがいる！！お前の助けなんか入らねえんだ！！引っ込んでろ、アメリカ人！！」
「渋谷、余計な事を言うな！！とにかく立花、今後一切オレ達の問題に関るな！！良いか！！」
それだけ言うと、鉄次郎と竜平はその場を立ち去った。
「何なんでしょうね、あの態度！！まるで夕樹さんが邪魔者みたいな言い方して！！」
「水島くん、渋谷くんは立花くんに嫉妬してるんだよ。立花くんは成績は良いし、運動神経も抜群だし、それに大岩先輩には可愛がられてるし……」
夕樹は中学に上がる時分にこの学園に入学し、空手部に入った時に鉄次郎と竜平に出会った｡夕樹と鉄次郎は出会った当初からウマが合い、実の兄弟のように仲良くやっていたが、どういう訳か竜平は夕樹が気に入らないようである。
「竜平はともかく、大岩先輩は不良相手の闘争にオレ達を巻き込みたくないんだろう。後輩のオレ達の身を案じてくれてるんだよ。あの人はそういう人さ」
鉄次郎が去った後を尊敬を込めた目で見つめながら、夕樹は言った。
その日の夕方、川沿いの土手を歩きながら鉄次郎と竜平が話をしていた。
「渋谷、お前がオレにくっ付いて来るから、仕方無しに同行を許しているが、本当はお前にもオレの問題に首を突っ込んで欲しく無いんだ。飯塚は初等部からのオレの敵。自分の問題に他人を巻き込みたくは無い」
「そんな先輩、自分だけの問題だなんて…校内の平和を乱す不良共は、全校生の敵！オレはその代表として奴らと戦うまでの事です。先輩だってそうでしょう？」
「そ、それはそうだが…」
「だったらオレを邪魔者にしないで下さいよ。オレ、飯塚から先輩に助けてもらった小学三年の時から生きるも死ぬも先輩と一緒と決めてるんですから」
竜平は初等部の時に飯塚に絡まれた事があり、果敢にも立ち向かったが敵わずボロボロにされているところを鉄次郎に救われ、それ以来竜平は鉄次郎を実の兄以上に慕っている。
「…オレは後輩のお前達を思うあまり過保護になり過ぎていたのかも知れん。その通り、悪を許さぬ心はみな同じ。これからも共に頑張ろう！」
「そうですよ、先輩！一緒に頑張りましょう！」
二人は堅く手を握り合ったが、ふと遠方を見ると何やら紙袋らしい物を下げて急ぎ足で歩いて行く二つの影があった。
「大岩先輩、ありゃあ飯塚と子分の黒崎だ」
「こんな時間に何しに行くんだ？よし、つけて見よう」
鉄次郎と竜平が二人をつけて行くと、海沿いの人気の無い倉庫の前に来た。そこには人相の悪い大勢の男達が待ち構えていたが、その中のボスと思しい男に飯塚は例の紙袋を渡した。どうも袋の中身は麻薬か覚醒剤のようである。
鉄次郎と竜平は倉庫の影に隠れて様子を見ていたが、事の次第がわかると竜平は思わずは憤慨の声を漏らした。
「何て野郎だ…。ヤクの運び屋なんかしてやがったのか！」
「お前達、毎度ご苦労だな」
「いやあ、何々…。それより、早くこの仕事の報酬を。早く帰らないとパパに叱られちゃいますから」
「気の毒だが、もうお前達は帰れんぞ。毎回同じ運び屋を使ってるうちに足が付くといかんから、お前達には消えてもらって次からは他の奴に運び屋をやってもらう事にする」
「えーーーーっっ！？そんな殺生な！！」
「安心しろ、ハジキは使わん。ちょいと当て身を食わせるだけだ。そうして海に放り込めば眠っているうちにあの世行き。警察じゃ事故死だと思うだろうぜ。さあ、野郎ども！！やれ！！」
「ひえ〜〜〜〜〜っっ！！お助け〜〜〜〜〜っっ！！」
飯塚と黒崎が羽交い絞めにされるのを見た鉄次郎と竜平は、堪り兼ねて悪漢達の前に飛び出し、二人を捕まえている男達を殴り倒した。
「飯塚！！早く逃げろ！！」
鉄次郎が言うと、飯塚と黒崎は後も見ずに屁っ放り腰で逃げ出した。悪漢達が後を追おうとしたが、その前に鉄次郎と竜平が立ちはだかった。
「待てい！！お前達の相手はオレ達がする！！」
その海沿いから少し離れた道を夕樹、安理、カカシが歩いていたが、飯塚と黒崎が慌てて走って来たのを見て不信に思い声を掛けた。
「おい、どうしたんだ？」
「あっ、あっ、あっちの倉庫で大岩達がヤクザと戦ってるんだよお！！」
それだけ言うと、飯塚は黒崎と共に走り去って行った。
「大岩先輩がヤクザと……？」
「大変だ、立花くん！早く助けに行かないと！」
「よし！安理、お前はこの事を警察に通報しろ！オレ達は先輩達を助けに行く！」
「危険ですよ！！」
「先輩達の危機を放っておけるか！！カカシ、行くぞ！！」
「合点承知！！」
安理は海沿いの倉庫へ向かった二人を心配そうに見送っていたが、いつまでもそうしている訳にもいかないので公衆電話を見付けると即座に110番通報した。
「もしもし、警察ですか？今、××町の海沿いの倉庫で……」
夕樹達が駆け付けると、桟橋の上で鉄次郎達が大乱闘していた。
「先ぱーーーい！！大丈夫ですかーーー！？」
「おおっっ！！立花！！来てくれたか！！」
鉄次郎と竜平に襲い掛かる悪漢ども相手に、夕樹の空手技とカカシの石頭が炸裂した。形勢は夕樹達に有利になって来たかに思えたが…。
ズギューーーーーン！！
突如、銃声が響いた。見ると、悪漢のボスが夕樹達にピストルを突き付けている。
「野郎ども、下がれ！！ふっふっふっふっ、小僧ども。今回はハジキは使わんつもりだったが、このままじゃラチが開かんのでな。こいつで仲良くあの世へ送ってやる」
鳴呼！まさに絶体絶命！！……と思いきや、その桟橋に一台のモーターボートが向かって来た。何と、乗っているのは水島安理！！
「安理ーーーーっっ！！危ないから戻れーーーーっっ！！」
「そうは行きませんよ！！ボクだって夕樹さん達を放っておく事なんてできませんからね！！それにどうやっても、もう戻るなんて事できっこありませんよ！！」
「どういう事だ！？」
「ボクはモーターボートの運転の仕方を知らないんですーーーーーっっ！！」
ずっごーーーーーーーん！！
モーターボートは桟橋に激突！！モーターボートは転覆し、桟橋は粉々に砕け、夕樹達も悪漢達も揃って海に投げ出された。
「たっ、助けてくれ〜〜〜〜っっ！！オレは泳げないんだ〜〜〜〜っっ！！」
溺れている悪漢ボスを尻目に、夕樹は何とか水の中で体勢を整えようと必死になっていた。
「くーーーーっっ！！安理の奴、可愛い顔してモーレツな事しやがる…」
「モーレツなのはお互い様ですよ」
「何だ安理、そこまで来てたのか」
「この事はちゃんと警察に通報しました。後はお巡りさんが来るのを待つだけです。さあ、一気に岸まで泳ぎましょう」
「ちょっと待て、先輩達は？」
夕樹が探していると、少し離れた場所に鉄次郎が見えた。何だか立ち泳ぎと言うより、溺れている感じである。
「まさか先輩…カナヅチだなんて…」
「夕樹さん、早く助けましょう！！」
その後、安理の通報で駆け付けた警官隊により悪漢一味は全員逮捕され、ボスの自白から覚醒剤の密輸ルートも解かり、密売人達はすべて御用となった。
夕樹は安理、竜平と共に鉄次郎を助けた後、直立不動のまま硬直して気絶しているカカシにつかまって(いわゆる丸太代わりである)岸へたどり着いた。当然、夕樹達五人は表彰され、一躍町内のスターとなった訳である。
「それにしても、全員無事でよかったなあ」
「この件のお陰で、飯塚達の一家もこの町からいなくなったし」
「今回の事で、飯塚も黒崎も警察に補導されて行ったけど、気の毒なのは親御さんだよなあ。自業自得とはいえ時期市長候補にまで伸し上がってたのに…」
「それより、校長から呼び出しだぜ。早く行こう」
「どんな用件だろう？やっぱり、学園内の恥を世間様にさらすようなマネしたから全員退学処分って事かなあ…」
「まさか…！！」
夕樹達が校長室に入ると、柔和な顔立ちの校長が待っていた。去年先代の校長が現役を退いたので、現在はその息子に当たる人が校長を務めている。どうせこの校長も先代のように取り合わないだろうと思って鉄次郎が飯塚の事を訴えなかったので、彼が飯塚の悪業に気付いたのは今回が初めてである。
「今度の事件の話は聞いている。キミ達、学園の中で悪さをする生徒がいるなら何故一言報告してくれなかったのかね？それなら私も然るべき処置をしたのに…」
「……！！」
「まあ良い。今回の件でこの学園の汚点が暴露される形になったが、同時にキミ達のような立派な生徒もいる事も世間に解かってもらえた筈だ。キミ達はこれからも、この学園を少しでも良い方向へ導けるよう頑張ってくれたまえ」
「…はい！」
「でも、あまり無茶な行動はしないように。自分達のできる範囲内で行動するように。良いね？」
「はい！！」
「良かった、今の校長は話の解かる人だったんだ」
「こんな事なら、もっと早く報告しとくんだったな」
「良いじゃないですか先輩。お陰でヤクの密売組織をぶっ潰せたんですから」
「…立花」
「何だ？竜平」
「今までは済まなかったな。オレはお前を誤解してたようだ。オレは全てにおいて優れているお前の事だから、どこか他人を見下したところがあるんじゃないかと思っていたが、お前は命懸けでオレと先輩を助けに来てくれた……」
「気にするな。オレはお前が思う程優れた人間じゃないさ。お前だってオレには無い優れたものをたくさん持ってるじゃないか」
「ありがとう、立花！！」
五人が話しながら中庭を歩いていると、鉄次郎の担任にして生徒指導の小野寺が、さも親しげに話し掛けてきた。
「やあやあキミ達、今回はお手柄だったねえ。いやあ、実は私も飯塚は前々から怪しいと睨んでたんだけどね、キミ達に華を持たせる意味で見て見ぬ振りをしてたんだ。ははは…」
「……」
「キミ達のような立派な生徒がこの学園にいてくれると思うと私も誇らしいよ。これからもお互い学園の平和の為に頑張ろう」
小野寺は鉄次郎に手を差し出し握手を求めてきた。鉄次郎は気が進まないまでもその手を握ろうとした…が、その時、夕樹の足が小野寺の足を引っ掛けた。
どっぽぉ〜〜〜〜〜ん！！
小野寺は後ろ向きで中庭の池に倒れ込んだ。哀れ全身びしょ濡れである。
「小野寺先生、済みませんねえ。ちょっと足が引っ掛かっちゃって」
「(立花の奴……オレでもやれない事を……)」
夕樹の大胆不敵な行動に、鉄次郎は心で苦笑いしながら思った。こいつ、今に大物になれる……。
「さあ、行こうぜ！！みんな！！」
「おーーーーっっ！！」
びしょ濡れの小野寺を後に五人は走り出した。空は晴れやかであった。
(完)
キャラクター紹介
立花夕樹。中学二年生。父親が日本人、母親がアメリカ人の混血の美少年。抜群の運動神経の持ち主で、空手は初段の腕前。学業成績も良く、特に英語が飛び抜けている。二重国籍者ならではの特権であろうが、本人は混血である事がややコンプレックスのようである(現在この話は夕樹の混血としての特徴が活かされないまま読み切り状態になっているので、そういった彼の苦悩とかの話も機会があれば作ってみたいです)。
大岩鉄次郎。中学三年生。夕樹達の先輩でグループの最年長。学業成績はあまり良くないが腕力が強く、空手は二段の腕前。年下の者に対して面倒見は良いのだが、やや過保護気味なのが玉にキズ。悲しい事にカナヅチである。
渋谷竜平。中学二年生。夕樹のクラスメート。腕っ節は強いが、こちらもあまり成績が良くない。空手は初段の腕前。自分を助けてくれた鉄次郎を慕う一方、美少年で優等生の夕樹に対してある種の偏見を抱いていたが和解した。
北野カカシ。中学二年生。学業も運動もそれ程飛び抜けていないが、堅ーい石頭を活用して迫り来る敵を圧倒する。呑気な性格で、いつも直立不動で突っ立っている。
水島安理。中学一年生。グループの最年少。大人しい性格で少女のような顔立ちの長髪の美少年。チェッカーズのファンで、普段から慕っている先輩の夕樹によくレコードを貸している。運動神経も先輩達程ではないが、そこそこ良く、素早い動きで引けを取らない。泳ぎも達者。真面目にコツコツ勉強するタイプなので、学業成績は良い方である。